アグリヒーリング|ワーケーション先行実証[三種町]

2022.11.10

能代白神農泊推進協議会[CONNE]が注目する「アグリヒーリング」で心の回復

▲写真(左)株式会社和郷 ナレッジバンク事業統括取締役 高橋義直さん|(中央)順天堂大学医学部 研究員の千葉吉史さん|(右)能代白神農泊推進協議会[CONNE]会長 山本 明弘

能代白神農泊推進協議会[CONNE](山本明弘会長)は、農業体験によるストレス解消の効果が見込まれる「アグリヒーリング」に注目しています。
農泊推進協議会をサポートしていただいている株式会社和郷 ナレッジバンク事業統括取締役の高橋義直さんからの勧めで、アグリヒーリングの研究の第一人者である順天堂大学医学部 研究員の千葉吉史さんと連携をとり、先行実証の機会を実現することができました。
今回は秋田県初の取り組みとして、解放感ある惣三郎沼公園でのなべっこ遠足と農業体験がもたらす効果をイベントを通じて実証していきます。

千葉先生から、報告書をいただきましたので、以下ご紹介します。

ストレス実証レイアウト

【実証のスケジュール】

実証は能代農泊推進協議会が行った体験プログラムの中のストレス変化を観察している。主な計測物質としてはαアミラーゼを採用した。

実施日:2022年10月1日(土)
場所:秋田県三種町森岳温泉・惣三郎沼公園

11:00初期値農泊イベント開会式 なべっこ開始ストレス計測1回目
12:30中間値なべわんグランプリ 昼食・審査ストレス計測2回目
14:00農業体験(梨狩り)圃場への移動あり
15:30最終値閉会式(表彰・解散・各自宿泊先へ)ストレス計測3回目

実証アクティビティは食体験イベントと農業体験の実施で、ストレス安定化とモチベーション形成の効果が予想されるものとしている。

唾液によるストレス値の計測試験

【唾液採取の方法】

専用チップで唾液を回収しその場で数値状態を計測する。なお検体はその場で廃棄される

唾液の採取については専門家の指導を受けた立会いのもとで行う。:一回あたりの採取量 適宜30秒から1分

①シートの先端を舌下部に入れ、唾液を採取します。(約30秒)

②採取したシートの後部を1段階引っ張り、シート先端部分をホルダー内に収めます。カチッといったら完了です。

③チップをセットすると電源が入ります。

④セットしたら表示に従いレバーを操作してください。警告音が鳴ってから装置の外に出ているシートを2段階目まで引っ張ります。その後、計測が開始されます。

【計測】ストレスバイオマーカーとしての唾液成分

・α-Amylase活性:総合的に不快さを認識している度合いを見る事が可能。
不快な刺激では上昇し、快適な刺激では逆に低下

・Cortisol:心理的・身体的ストレスにより増加、心の緊張を見る事ができる

・slgA:運動、精神的ストレスと関係し、ストレスの種類によって異なった増減をする。
また、急性ストレスで増加するが、慢性ストレスで低下=緊張で体が硬直するなど身体的緊張を見る事が出来る

【実証のスケジュール】

実証は能代農泊推進協議会が行った体験プログラムの中のストレス変化を観察している。主な計測物質としてはαアミラーゼを採用した。

●測定物質:αアミラーゼ

生体にストレス負荷を加えると交感神経活動が亢進することにより唾液αアミラーゼ活性が上昇する。

【有用性に関する論文】https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnas/10/3/10_19/_pdf

測定結果の考察

アミラーゼ値推移

・被験者のうち有効な計測となった18名のアミラーゼ値初期平均23程度とは概ね安定的な状態(個人差があるものの10から30位内が正常値内、5以下は活力の低下、15~25より良好、30以上高ストレス)。

・アミラーゼ値は自律神経の状態とリンクする傾向があり、朝方は低い傾向、日中活性化して夕方に徐々に低減する。

・本検証群は元々の数値の良好さがさらに増進し、体験後にはストレスを感じず、活力もある状態となっている

(考察)

体験中は安定的な気持ちが増進し、同時に活力の維持がみえる

状態変化

・被験者18名のうち10名にストレス軽減の傾向が見られた。

・左図のように、やや高い群平均値が計測2以降安定となり、体験後も継続している。

・右図のように、やや活力の低い群は体験後数値が良好な水準に高まり、その後の農業体験でやや落ち着きの増進が見えるが、初期値よりも高い水準で終了している。

・軽減・活性化の両面から多くの被験者に安定的なアミラーゼ値(10程度から20程度)となっている 

まとめ

・体験活動語アミラーゼ値による計測で被験者によりのストレス因子低減が確認された。

・体験により個々のストレス初期値から低減・増進が適宜起こりアミラーゼ値が平均として好ましい水準になっていた。

・個々の趣向による部分は加味しなくてはならないが、体験活動は一定のストレス軽減および活力醸成など体験者のメンタル状態に一定の効果を及ぼす可能性が示唆された。

地域での農村体験活動が一定のメンタルへの効果を示す事が示唆された

体験プログラム案(1)「なべっこ体験」

地域に伝わる鍋づくりを高景観の中、家族や仲間で行う事でストレス軽減とモチベーション形成が期待

[実施時期]:通年

予想効果パラメーター

アグリヒーリング 予想効果パラメーター

ストレス軽減の傾向

②農村体験要素
⇒原料農作物触合い要素およびクラフト要素
1:コルチゾール値の減少予想(慢性ストレス改善)
2:クロムグラニン値の影響(緊張感低減効果)
3:オキシトシン値上昇(幸福度増進)

⑤食要素
⇒産地情報を持った食事提供(その場での食事の場合)
3:クロムグラニン値の低減(体験作業との複合で増進)
4:オキシトシンの微増

総合予測:慢性ストレスの最大50%低減:緊張ストレス値の最大40%低減、幸福度の安定的な上昇(味噌づくりより効果が高い予想)

(備考)
*傾向としてクラフト作業の苦手な体験者には効きにくい
*地元住民との対話がオキシトシンの向上を導く可能性あり
*ただしコミュニケーションの煩わしさを感じやすい利用者効果は低い

体験プログラム案(2)「農業体験(リンゴ・梨狩りなど)」

果樹の収穫体験による農業体験で、ストレス低減や幸福度の向上などが期待される

[実施時期]:夏季

予想効果パラメーター

アグリヒーリング 予想効果パラメーター

ストレス軽減の傾向

①農作業要素
1:コルチゾール値の減少予想
2:クロムグラニン値の微減(緊張感低減効果)
3:オキシトシン値上昇(農村イメージが高い場合)
4:わずかではあるが睡眠への効果(心地よい疲れによる誘導)

総合予測:慢性ストレスの最大40%低減:緊張感の緩和(ただし個人差が大きく全人的効果は低い)幸福度の安定上昇、作業時間が90分以上は好ましくない

(備考)
*慢性ストレスへの効果は先行研究からほぼ確定している
*作物アレルギー等の意確認必要
*虫などへの忌避間の確認が必要
*施設栽培での体験などを視野に入れる
*食体験を取り込むほうが有効である

【参加者の声(一部抜粋)】

60代女性

久々のなべっこはとても楽しかった。ロケーションも良い。また来たいと思う。ストレスチェックがとても良かった。具体的な数値で見れるのがよかった。 またやるのであれば、参加したいと思う。

60代女性

ストレスチェックがとても興味深い。数字が上がったり下がったりによって、自分がどこにストレスを感じるのかがわかる、という話がとても興味深い。もっと詳しく知りたいと思った。

30代男性

子供が少し大きくなって、こういったイベントにも参加できるようになった。妻がとてもいい顔でリラックスしている感じだったので、参加してよかったと思う。やはり、自然の中でのこういう体験は、とてもいいな、と思う。 ピクニックなど、これから増やしていこうと思う。

40代女性

ストレスチェックでわかる数値によって、認知症などの発症リスクや、何にストレスを感じるのか、が見えてくる、という話がとても面白い。気分ではなく科学的に自分がリラックスしているのかどうかが分かるというのはすごい。他で同じようなことは聞いたことがない。 ぜひ継続してほしいし、ストレス社会対策にもいいと思う。

実際のなべっこ遠足+梨狩り体験の模様はこちらのページからご覧いただけます。

能代白神農泊推進協議会『CONNE』主催【なべわんグランプリ in 森岳】イベントの模様